6月5日 晴れ
<100㎝への挑戦>
ビスクドールに関してまだまだ経験値の浅い私には、越えるべき壁がたくさんありました。
1200度以上の高温で焼きしめるのですから
粘土では想像だにしなかったハプニングが次々に起こります。
その上、窯は購入したばかりで不慣れです。
それら一つひとつに納得がいくまで向き合い、自分で解決していくしかありません。
何しろ、いきなり全長100cmという無謀な挑戦なのです。
「歪み」「亀裂」・・・悪戦苦闘の連続でした。
少し話は逸れますが・・・
昔、のぼり窯で有名な信楽の工房で焼き物を教わったことがありました。
温度によって様々に変化する難しさを「偶然の産物」という言葉を使った私に対して
「偶然を必然にするのがプロなんやっ!!」
と陶工職人さんのひと言。
ハッと気付かされました。
専門知識を全く持たなかった私は、軽率な自分の言葉に己の無知を大いに恥、
以後、己を律する言葉として深く心に刻んだ記憶があります。
<偶然を必然に>
正に、この言葉を反芻しながら、100㎝のビスクドールに挑みました。
【夕鶴】 <全長100㎝のビスクドール>
箪笥の奥に大切に保管されていた母の花嫁衣裳を見た時
この着物を背景に人形を作りたいと強く思ったからです。
鶴が優雅に舞う美しい着物です。
それに負けないくらいの大きな人形【夕鶴】をどうしても作りたかったのです。
やっと・・・納得できる作品に仕上がりました。
そして・・・2009年
東京丸の内オアゾ、丸善本店4Fギャラリーでの「世界創作人形展」に出品しました。
初日に行われた海外作家との懇親会は、言葉の壁を越え、
人形を通して「想い」がひとつになった素晴らしい瞬間でした。